ウスペンスキー『チェブラーシカとなかまたち』

 Yです。

 今日は『新版 チェブラーシュカとなかまたち』を紹介いたします。映画「チェブラーシカ」の原作本*1です。

 「あなたがた、みなさんは、きっと、わたしのように、こんなに、あいらしくって、きだてのいいきりんに、なぜ、ぜんぜん友だちがないのかってことに、とても、きょうみをもつでしょうね。そうじゃないこと?」
 ゲーナと、ガーリャと、チェブラーシカは、じっさい、そのとうりだなと、思うのでした。
 「それじゃ、あなたがたに、せつめいしましょう。それはね、つまり、わたしが、とてもせが高いためなんですよ。わたしと話をするためには、頭をどうしても、もちあげなくてはならないでしょ」きりんは、首をのばして、かがみの中の、自分を注意ぶかく見つめました。「でも、あなたがたが、首を高く、もちあげて、とおりをあるいたりしたら、きっと、なにかの、あなとか、みぞにおっこちるでしょう!……そんなわけで、わたしのお友だちは、みんな、あちこちの、とおりで、いなくなってしまったの。いまではあの人たちを、どこで、さがしたらいいのかわからないのよ。ほんとに、かなしいお話でしょう!」
(p.65)

 とっても悲しいですね。
 
 この本は挿絵も素晴らしいのです。
これはアルフェーフスキーという方の描いた最初期チェブラーシカ

完全にたぬきですね。
映画とはまったく造形が異なります。
 
 
 本文の方もやはり映画とはカラーが違っています。
映画はキャラの愛くるしさや寂しさ、孤独を繊細に描き、とても温かい作品に仕上がっています。
原作は全編ジョークとナンセンス。いいお話の方へと流れて行きそうになると、ぐいっとブラックユーモアの世界に引き戻される感じで、そこらへん、ウスペンスキーの手綱さばきは絶妙なものがあります。
どちらにも共通するのは鋭い人間観察でしょうか。これはロシアの文化全般に言えることのような気がします。
 
 私は映画から入ったクチですが、原作も好き。甲乙つけがたいですね。
 
 

 
 
 

*1:発行は1960年代からロシア(当時はソ連)の文学や絵本、教育書などの出版を手掛けてきた新読書社。80年代には日ソ国際共同出版という試みを行っていたというユニークな出版社です。